yuku.dev

2021-05-26

Ubie がスタートアップだからこそ OSS に寄付をする理由

いま働いている Ubie で OSS に寄付していくことを決め、まず手始めに JavaScript トランスパイラの Babel に$500 の寄付を行いました。日本のスタートアップが OSS に寄付をするのはまだあまり目にしないため、Ubie がスタートアップだからこそ OSS に寄付しようと考えた理由をご紹介します。

スタートアップにこそ OSS が必要

時間も体力もないスタートアップは、とにかく最速で事業を成長させなければならず、OSS が高速道路としてそれを支えてくれています。

これは極論ですが、OSS が全てなくなったとき、そのまま事業を続けていく自信が皆さんにはありますか?少なくとも僕にその自信はありません。体力のある大企業であれば内製する選択もできそうですが、スタートアップでは OSS なしにはビジネスを成し得ない場合が殆どではないでしょうか。

OSS が持続せずに困るのは、一般的に OSS に多く貢献している大企業よりもスタートアップの方なのです。

技術的貢献は難しい

OSS への貢献といえば、大きく技術的貢献と金銭的貢献の 2 つに分けられます。

前者が大きくフィーチャーされている印象ですが、一般的にスタートアップ、特に仮説検証を繰り返すフェーズでは、OSS への技術的貢献になるようなタスクの優先度が上がることはなかなかありません。

Ubie もまさにそうで、業務の副産物をオープンにしたり、個人的にコントリビューションしたりしているメンバーは多くいるものの、メイン業務として OSS の開発に取り組む意思決定はなかなかできない状況です。

一方で、Ubie のように一定規模の資金調達を実施したスタートアップでは、人的資本に比べるとお金には多少の余裕がある場合が多く、お金で時間を買いたい状態です。OSS が存続・発展することで浮く時間を考えると、寄付をしない選択肢は考えられませんでした。

寄付をするまでの流れ

きっかけは、 2021/05/10 に Babel チームが出した Babel is used by millions, so why are we running out of money? という記事です。月間 1 億ダウンロードものユーザーがいるのにも関わらず、寄付による資金調達目標に到達しなかったことを嘆いています。今のままだと 2021 年末までしかメンテナの報酬を維持できないようです。

今でも Babel リポジトリには約 600 個もの Opened Issue があり、開発が追いついていない状況です。ここからさらにメンテナが減ってしまうと、新しい言語機能への追従なども難しくなるのではないでしょうか。

Ubie ではほぼ全てのプロダクトを Web アプリとして実装しており、当然 Babel がビルドツールチェインに欠かせないものとなっています。Babel の開発が止まると、ECMAScript や TypeScript の更新に置いていかれるなど、今まで通りのプロダクト開発はできなくなるでしょう。

Babel の記事を読んですぐに、エンジニアメンバーに危機感の共有と寄付の相談をしたところ、スムーズに理解が得られ、なるべく早くどんどんやろうということになりました。

しかし、大きめの金額だとどうしても承認などのプロセスが必要になってしまいます。そのため、ひとまず善は急げということで、個人の裁量で即座に投じることのできる額として、決して多くはありませんが $500 を寄付しました。寄付作業は Open Collective を通して 5 分もかからずにできました。今後の寄付先の選定方法や金額、タイミングなどはこれから設計して継続していこうと考えています。

まとめ

スタートアップとして、OSS がなくなるとめちゃくちゃ困るからこそ、これからも継続的に貢献していきたいと考えています。

しかし正直、今の Ubie の力だけではエコシステムに大きな変化をもたらすことはできません。ただ、10 社が月に $500 を寄付すれば、1 人のメンテナが生活に困らずに OSS 開発に打ち込むことができます(働きに対して十分かどうかはまた別の話ですが)。これはそこまで難しいことではないと思っています。

皆さんがお世話になっている OSS を思い起こして寄付を考えるきっかけになると嬉しいです。また、より大きな貢献をしていくためにも、Ubie を一緒に成長させてくれる方も募集中です。

Ubie Discovery 採用サイト